【追補】妊娠高血圧症候群について

 2018年3月3日の日本産科婦人科学会理事会において,本書『助産師国試対策スキルアップ(第3版)』のp.158〜160で解説している「妊娠高血圧症候群」について,新定義および臨床分類等の改定がなされました。
 以下では,本書に関わる事項に関してのみ,その要点を解説しました。改定となった箇所は,アンダーラインで示しました。項目の後ろに付したカッコ書きは,本文中の掲載ページです。また,詳細をご覧になりたい読者の皆様は,日本妊娠高血圧学会等のHPをご覧ください。
■疾患名(p.158)
 妊娠高血圧症候群の表記は,和文は現状のままで,欧文は pregnancy-induced hypertension(PIH)を,hypertensive disorders of pregnancy(HDP)に変更しました。
■定 義(p.158)
 これまでの定義は「妊娠20週以降,分娩後12週までに高血圧がみられる場合,または高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかで,かつこれらの症状が単なる偶発合併によるものではないものをいう。」
でしたが,新たな定義は
 「妊娠時に高血圧を認めた場合,妊娠高血圧症候群とする。妊娠高血圧症候群は妊娠高血圧腎症,妊娠高血圧,加重型妊娠高血圧腎症,高血圧合併妊娠に分類される。
と変更になりました。
■病型分類(p.159:表5-1)
 これまでは「妊娠高血圧腎症 preeclampsia,妊娠高血圧 gestational hypertension,加重型妊娠高血圧腎症 superimposed preeclampsia,子癇 eclampsia
の4つでしたが,新分類では4番目の子癇が削除され,これに替わって高血圧合併妊娠が新設されました。また,各疾患名に略語が付記されました。新分類は
 妊娠高血圧腎症 preeclampsia(PE),妊娠高血圧 gestational hypertension(GH),加重型妊娠高血圧腎症 superimposed preeclampsia(SPE)高血圧合併妊娠 chronic hypertension(CH)
となりました。各病型に関する要約は以下のとおりです。
○妊娠高血圧腎症(PE)
 定義が3つ挙げられていますが,第1の定義は
 妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し,かつ,蛋白尿を伴うもので,分娩12週までに正常に復する場合.
○妊娠高血圧 gestational hypertension(GH)
妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し,分娩12週までに正常に復する場合で,かつ妊娠高血圧腎症の定義に当てはまらないもの。
○加重妊娠高血圧腎症 preeclampsia(PE)
 定義が4つ挙げられていますが第1の定義に追補がありました。
 高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し,妊娠20週以降に蛋白尿,もしくは基礎疾患の無い肝腎機能障害,脳卒中,神経障害,血液凝固障害のいずれかを伴う場合。
 新たに以下の第4の定義が追加されました。
 高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し,妊娠20週以降に子宮胎盤機能不全を伴う場合。
高血圧合併妊娠 chronic hypertension(CH)
 高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し,加重型妊娠高血圧腎症を発症していない場合。
■症候による亜分類(p.159:表5-1)
○重症について
 次のいずれかに該当するものを重症と規定する。なお,軽症という用語はハイリスクでない妊娠高血圧症候群と誤解されるため,原則用いない。
 1.妊娠高血圧・妊娠高血圧腎症・加重型妊娠高血圧腎症・高血圧合併妊娠において,血圧が次のいずれかに該当する場合。
  収縮期血圧 160mmHg以上の場合。
  拡張期血圧 110mmHg以上の場合。
 2.妊娠高血圧腎症・加重型妊娠高血圧腎症において,母体の臓器障害または子宮胎盤機能不全を認める場合。

蛋白尿の多寡による重症分類は行わない。

○発症時期による分類
 妊娠34週未満に発症するものは早発型(early onset type:EO)
 妊娠34週以降に発症するものは遅発型(late onset type:LO)
*わが国では妊娠32週で区別すべきとの意見があり,今後,本学会で区分点を検討する予定です。